【報告・動画あり】第11回 アジアの民主化を促進する東京集会

投稿日 :2021年11月21日

11月13日に開催されました「第11回 アジアの民主化を促進する東京集会」の動画です。ぜひご覧ください。



第11回アジアの民主化を促進する東京集会報告

 11月13日、アジアの民主化を促進する東京集会が東京赤坂の会議室で開催され、約60名が参加しました。午後2時に集会は開会、加瀬英明名誉会長の開会あいさつの後、山田宏参議院議員のメッセージが紹介されました。

「アジアの民主化を促進する東京集会のご開催を心よりお慶び申し上げます。
日本は、自由、民主主義、法の支配を重んじる国家として、アジアの自由と民主化のために行動する責任があります。
本日の集会が、酒井信彦先生のご講演およびシンポジウムを通じ、皆様にとって実り多いお時間になるかと存じます。
私も、本日ご参集の皆様と共に、アジアの自由と民主化のために努めてまいります。
最後になりましたが、ご来会の皆様のますますのご多幸をお祈りいたします。

参議院議員 山田宏

 続いて、元東京大学史料編纂室教授、酒井信彦先生による基調講演「中華民族主義という侵略イデオロギー」が行われました。

 まず酒井先生は、近現代史の歴史から解説を始め、もし歴史に進歩があるとすれば、それは抑圧され、植民地化された民族が、民族自決を確立し、独立した国家を築いていくこと、独裁体制から民主化が進むことにあると述べました。
 そしてその意味では、中華人民共和国こと、中共は侵略国家として世界史に登場したことは明らかであることを指摘しました。酒井氏は地図を示し、チベット、ウイグル、モンゴル、満州などは本来中国ことシナの領土ではなく、また「中国」という言葉でごまかされやすいけれど、本質的には、シナの歴史とは、明、清、中華民国、中華人民共和国、すべて別の国の歴史であり、その領土範囲も異なることを説明しました。

続いて、歴史の進歩の一つの基準である民族独立とは、結果的に、戦争によって実現したことが歴史的事実としてある、これは平和主義者が何と言おうと事実として変わらないことだと述べ、第一次世界大戦がヨーロッパで、第二次世界大戦がアジアで、結果としていくつもの独立国家を生み出したこと、特に第二次世界大戦は、戦勝国であるはずのイギリスやフランスの植民地の独立をもたらしたことを指摘しました。しかし、中華人民共和国の建国、そしてソ連により行われた、第一次世界大戦で独立したはずのバルト三国の併合は、はっきりとこの歴史への逆行であり、侵略と植民地支配であることを批判しました。
 
そして、自分が専門として研究してきたチベットは、明の時代には完全な独立国であり、元、清の時代にも間接的な支配しか受けていない、また、文明(信仰、文学、政治体制、建築など様々な面において)まったくシナ帝国とは独自のものを築いてきたと述べました。そして中国共産党支配下に置いて、チベット亡命政府によれば120万人の犠牲を出している、そのことを日本の知識人やマスコミがきちんと指摘しようとしていないと述べました。

また、現在の中華人民共和国の基本となるのは「中華民族主義」という侵略イデオロギーであり、それは、同国は多民族国家であり、シナ人(漢民族)と55の非シナ人(少数民族)で成り立っているという考えであって、後者を漢民族に従属させる思想だと述べました。
一例として、1989年、天安門事件の年であり、また、チベット蜂起がラサで起きていたころ、「チベット独立論に反論する」という原稿が当時の北京週報(2月21日)に掲載されていたことを紹介しました。

その論稿によれば、例えば元帝国について「(蒙古族の)国内民族統一戦争を、外国民族による征服と考える視点」は間違いであり、又、清帝国も満州族が建国したのではなく、あくまで、モンゴルも満州も「中華民族」であって、中国国内の支配民族の交代にすぎないというものということでした。これは結局、中華民族という名の下に、チベット侵略を含め、ウイグルやモンゴルなど、すべての民族の侵略を正当化するイデオロギーだと酒井氏は指摘しました。

そして、「中華民族」という概念は、「統一的多民族国家」という概念の元、すべての民族を「家族国家」として、漢民族という課長の支配下に置く、それは既に露骨に、中華民国を建国した孫文の言葉の中に現れているとして、そのいくつかを紹介しました。

(以下はすべて孫文の言葉で、彼の中華思想と侵略性をよく表現しています)
「漢満蒙回蔵の諸地を合して一国となし、漢満蒙回蔵の諸族を合して一人の如からんとす」(1912年)
「余の現在考えている調和方法は、漢民族を以て中心となし、満蒙回蔵四族を全部我等に同化せしむると共に(中略)漢満蒙回蔵五族の同化を以て一個の中華民族を形成し」(1921年)
「中国民族の総数は4億、その中には、蒙古人が数百万、満州人が百数万、チベット人が数百万、回教徒のトルコ人が百数十万人交っているだけで、外来民族の総数は1千万にすぎず、だから、4億人の中国人の大多数は、すべて漢人だと言えます。同じ血統、同じ言語文字、同じ宗教、同じ風俗習慣を持つ完全な一つの民族なのであります。」(1924年)

さらに酒井氏は、日本のマスコミが今も平然と使う「族」、チベット族、ウイグル族、モンゴル族と言った言葉は、完全に漢民族がほかの民族を蔑視する言葉であり、国家を形成する能力のない未開な「部族」であることを意味している、これを使うマスコミ媒体はそれだけで侵略と差別を正当化しており、チベット人、ウイグル人、モンゴル人はこれに明確に抗議してほしいと述べました。

そして、「中華民族」とは周辺にシナ人(漢民族)が侵略し、周辺国に居住することにより侵略が始まる、日本も危機にあることを知らなければならないとし、今のところフェイクニュースとは言われているが、1983年の段階で人民日報に「大和族」という言葉が使われたことがあったと報じられた。また、歴史家の安田喜憲氏の著書「龍の文明 太陽の文明」(PHP新書)によれば、北京に21世紀の幕開けと共に建てられたモニュメント「中華世紀壇」があるが、そこには漢民族から台湾の高砂族まで、56の民族のシンボルが配置されているが、57番目はなぜか空欄になっている。そして安田氏の記述では、同行した中国人が、笑いながら「先生ここにはいずれ倭族が入るのですね、それでいいじゃないですか」と述べたとある。これを一つの例として、中国共産党、漢民族の侵略の意図があることを、日本人は忘れてはならないと警告しました。

続いて第二部では、チベット人女性のソナム・ギャルポ氏、ウイグル人女性のグリスタン・エズズ、南モンゴル人女性の佐藤メグの3氏がシンポジウムを行いました。ソナム氏は、チベットから多くの少年たちが国境を越えて逃れてくる現状と、しかし、中国に残してきた親御さんたちと離れて暮らさねばならない問題、そして、現在のチベットが、伝統信仰である仏教信仰も守られない現状を訴えました。

グリスタン氏は、今ウイグルでは、女性は最低の人権状況に置かれている、好きな男性と結婚する自由もなく、強制的に中国人男性と集団結婚を迫られていること、臓器売買という許しがたい犯罪が続いていることなどを訴えた後、世界全体が、中国のこのような犯罪を許し、しかも経済的な支援を続けているのではないか、それでは世界が、ウイグル人ジェノサイドに対する共犯者になってしまっていると訴えました。

メグ氏は、文化大革命時代、モンゴル人女性に加えられたレイプや拷問、強制堕胎などの事例は、あまりにも凄惨で、この場で発言することすらつらい、モンゴル人学者楊海英氏などの著作は発掘した資料をぜひ読んでほしいと述べ、さらに、いまは南モンゴルから、草原という自然環境も、母語であるモンゴル語も奪われ、滅ぼされる文化的ジェノサイドが行われていると訴えました。そして、その中で追い詰められて死を選んだ女性を紹介し、自分はこの人たちを「自殺」として紹介したくはない、あくまで殺害された人々だと強調しました。

協議会広報担当の古川郁絵からは、このような悲痛な訴えを聞くたびに、日本人として、国会での非難決議すら実現できなかったことを申し訳なく思う、これはもはや人権弾圧というレベルではなく、世界がもっと取り組まなければならない深刻なジェノサイドだと強調しました。

四氏のシンポジウムの後、アジア人権賞が、ミャンマーで民主化のために軍のクーデターに対し今も闘い続けているすべての人々に対し送られ、ミャンマー人でアラカン州出身のラエイマウン氏が代表で表彰状を受け取りました。

続いて、当会代表のペマ・ギャルポより閉会宣言が行われ、自分が日本で中国の侵略や脅威を訴え始めた数十年前に比べ、現在の日本でははるかにその問題に対する意識は高まってきている、確かに、先の国会での、(事実上中国に対する)人権非難決議は通らなかったが、以前は非難決議を行おうという発想すらなかったと、決して状況は悪いことばかりではないと述べました。

そして本日公演してくださった酒井先生は、東大教授という公職にありながら、チベット問題を訴え、私と共にデモもしてくださった。そのような先駆者の姿も私は決して忘れず感謝し続けているし、思想的には酒井先生のような方に教えられて、チベットについての意識を、チベット人でありながらさらに深めることもできたと感謝の念を述べました。さらに、土曜日の午後という時間帯に多数集まってくれた参加者へも感謝すると共に、今後、中国だけにこだわるのではなく、アフガニスタンなど、アジアの民主化についてより広い視点で学習会を開催していきたいと述べました。

最後に、下記決議文が朗読されたのちに拍手によって承認され、午後五時、第11回アジアの民主化を促進する東京集会は閉会いたしました(文責 三浦)



第11回アジアの民主化を促進する東京集会
決議文

ミャンマーのクーデター、アフガニスタンでのタリバン政権の出現など、現在、アジアの民主主義は様々な危機にさらされている。この問題の中心にあるのは、中国共産党独裁政権が、ますますその悪しき影響力を国際的に強化していることである。
現在の中国国内では、本日、チベット、ウイグル、南モンゴルの女性証言者が訴えたように、明らかなジェノサイド政策が各民族に対し行われている。これに対しては、国際社会で様々な抗議や告発の声が上がりつつあるにもかかわらず、中国政府は全くその声に耳を傾けず、ジェノサイド政策を継続して恥じない。
世界的にも独裁政権を支援し、覇権主義によって世界の平和を脅かすと同時に、国内でジェノサイド政策を行っている中国の首都北京で、来年2月には北京オリンピックが開催される予定である。しかし、平和と差別なき世界をめざす本来のオリンピック精神からすれば、いかなる意味でもこの開催は正当化されるものではない。
日本国政府並びに国会議員諸氏は、次期国会にて、先の国会では不成立に終わった人権非難決議を直ちに成立させると共に、人権改善なき状態での北京オリンピック開催に対し、堂々と抗議の声をあげるべきである。また、私たち国民も、自由と民主主義、そして民族自決権の価値を普遍的なものとして尊重し、そのアジアにおける実現を目指して、今後とも闘い続けることをここに誓う。

2021年11月13日
アジアの民主化を促進する東京集会参加者一同



また、当日の写真は以下の通りです。

(C)モーリー
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