2月21日、東京日本青年館国際ホールにて、第4回アジアの民主化を促進する東京集会が開催されました。今年は、当協議会が主催、呉竹会ならびに、頑張れ日本!全国行動委員会を協力団体にお迎えして催されたこの集会には、約100人が参加、午後2時より開会しました。
司会は当協議会の古川郁絵広報部長。まず、開会挨拶を、協議会副会長のイリハム・マハムテイが勤めました。イリハム氏は、これまで自分たちアジア諸民族は、日本の人たちと連帯して、アジアの民主化のために努力してきたが、現実的には中々うまく進んでいない、その理由の一つは、団結とか、連帯とか、言葉でいうのは簡単なのだが、現実には難しい問題がいろいろある。民族間の意志や問題の相違、また、支援者と運動家の関係、団体内の矛盾など、敵である独裁政権への批判と同時に、自分たちの内部にある問題点にも目を向け、自省して行かなければ、運動の前進は難しいと、自分たち内部の欠点にも目を向けるべきことを語りました。
イリハム・マハムテイ副会長
その上で、先にISILが日本人人質を含め、非道なテロを行っていることにも触れ、あのようなテロはいかなる意味でのイスラムの伝統にはあり得ない、自分自身イスラム教徒としてこのことは断定できると語り、むしろあのようなテロこそ、中国共産党が現在ウイグルで行っていることそのものだと力説しました。そして現在ウイグルでは、弾圧が強まる中、絶望的な抵抗に立ち上がる人が出てきている、外部にいる我々こそが、彼らへの弾圧をやめさせるよう運動を強めていかなければならないと述べました。
続いて柿沢未途衆議院議員より集会への祝電、そして評論家の石平氏からのメッセージが司会より代読されました。柿沢議員は、未来のアジアの民主化に向けてこのような集会が催される意義を高く評価する祝電をいただき、石平氏は、今、アジアの世界で存在する最大の独裁国家は、すなわち中国共産党支配下の中華人民共和国であり、中国共産党政権こそは、アジアの民主化にとっての最大の障害物であり、民主化を望むすべての人々の共通した敵であることを明言し、かつ現在の習近平政権は、以前の胡錦濤政権にもまして国内の言論自由に対するよりいっそうの厳しい弾圧を行い、毛沢東流の恐怖政治を復活させようと企んでいること、また対外的には、「民族の偉大なる復興」のスローガンのもとに、かつてアジアにおける「中華秩序」を作り上げてアジアに君臨した中華帝国の栄光を取り戻して、中国がもう一度アジアの頂点に立ちアジアを支配しようとしていると指摘しました。
その意味で、習近平政権は世界最大にしてもっとも危険なファシズム政権であり、中国こそがアジアと世界の平和にとっての最大の脅威となっている。中国の民主化を促進して中国共産党の独裁体制を打破することこそが、アジアの、そして日本の平和と民主主義を守ることであり、だからこそ日本国民は中国の民主化を支援すべきであると述べました。
続いて、第一部の基調講演として、外交評論家の加瀬英明氏が登壇。加瀬氏は、今年が先の世界大戦終戦から70周年を迎える年てであることに触れ、歴史を俯瞰してこのアジアの民主化を考える視点を語り始めました。
加瀬英明氏
まず、日本に黒船ことペリーのアメリカ艦隊が1853年に来航したことに触れ、きわめて高圧的な砲艦外交によって日本は不平等条約を押し付けられる形で欧米と開国せざるを得なかったこと、これにより、近代日本の使命は、不平等条約撤廃、そして、欧米によるアジア植民地体制からの諸民族の解放という二つになったことを述べました。
そして、不平等条約撤廃の為に日本は涙ぐましい努力をしたこと、例えば、鹿鳴館において、自分たちもヨーロッパと同じ文明を持てることを表すために、ヨーロッパそのものの舞踏会を催し、また、現在に至るまで、例えば外国の元首が訪日された折には、天皇陛下も洋装でお迎えになる。また宮中晩餐会や首脳会談のおりでも食事は主としてフランス漁師が出される。これはふつうありえないことで、どの国でも自分の国の最高級の料理を出すのが当然なのに、未だに、鹿鳴館時代の、欧米の真似をすることが欧米と対等になることだという意識が残っていると述べました。
そして、不平等条約が完全に撤廃されたのは、実は日露戦争で日本が勝利した後だったことにも触れ、ある意味、欧米社会が日本を対等の存在と認めたのは、残酷な近代戦争で勝利したからこそだったと指摘。国際社会が完全に力の論理であることを述べた上で、その後日本が、大東亜戦争で目指したものは、まさに、欧米による植民地体制の打倒と民族解放だったことは、大東亜会議とその宣言を読めば明らかだと述べました。自らの父上、加瀬俊一氏の言葉を紹介し、加瀬氏も、また重光葵氏も、日本は確かに戦争には敗れたけれども、その目的である植民地の解放、人種平等社会の実現のためには大きな勝利を挙げた、その事を常に誇りに思っていたことを語りました。
今現在、中国国内には、南モンゴル、チベット、ウイグル、そして満州など、多くの民族が事実上植民地支配下に置かれている現実がある。かって、ベルリンの壁が築かれたときに、ケネデイ大統領が西ベルリンを訪れ「すべての自由な人間は、どこに住んでいようと、ベルリンの市民である」と、抑圧下にある人々を励ましたように、自分も、すべての抑圧されたチベット人、ウイグル人、南モンゴル人らと共に、中国の独裁の民主化、植民地支配からの民族解放を求めることが、今後の日本の使命であると考えると述べて講演を結びました。
続いて、第二部のアジア諸民族の訴えは、まず、北朝鮮からの脱北者で日本在住の李春子氏に始まり、李氏は自分が1960年、帰国事業で北朝鮮に家族とともに渡ったこと。そして、港に着いてすぐに、この北朝鮮という国は自由もなく当時の日本よりもはるかに貧しいことが分かった、それでも最初の内は食糧配給はあったけれども、90年代になって配給が途絶えたのちは、餓死者が急増し、自分は脱北して中国に渡り、そこから日本に戻ってきたと語りました。そして、中国という国も、確かに北朝鮮よりはいいかもしれないけれど、基本的に自由がないという点では同じで、共産党独裁というものを世界からなくなさなくてはいけないと述べました。
李春子氏、ロサン・イシ氏、ペマ・ギャルポ会長
チベット人のロサン・イシ氏が、ペマ・ギャルポ協議会会長の通訳で登壇。今年はチベット歴では2142年になる、自分たちは、中国とは、伝統も、国の歴史も、文化も、価値観も違うのだと述べ、さらに、中国は日頃から、チベットを自国の領土の一つだと言い、チベット固有の文化を現在に至るまで破壊し続け、今でも自由を奪われて苦しめられている、ダライラマ法王の写真を飾ることも許されていないと述べました。
最近の中国政府は、政府に忠実な共産党員のチベット人すらも逮捕、捜査を強めている、そして、15名のチベット人共産党員幹部が逮捕されたが、その容疑は、チベット亡命政府に繋がっていること、地下活動をしていたことなどだと述べ、それには何の根拠もない、政府はチベット人であれば、例え忠実な党員でも、幹部や役職から追放しようとしているのだと述べました。
つづいて台湾から、台湾独立建国聯盟の王明理氏が登壇、まず日本国民がはっきり認識しておかなければならないのは、中国4千年などという言葉は何の根拠もなく、現在の中華人民共和国はわずか数十年の歴史しかない、しかも危険な国であり、中国に対するおかしな幻想は捨てるべきだと述べました。
その上で、現在の台湾の国民党政権は、政治的にも経済的にも、中国に従属する姿勢を強めつつあることを実例を挙げて指摘し、しかし、同時に昨年のヒマワリ運動に見られるように、民衆の側は確実に独立を求め中国の抑圧を拒否する精神が根ざしつつある、この動きが今後の台湾の未来につながることを期待を込めて述べました。
王明理氏、王戴氏
続いて、中国民主陣線の王戴氏が登壇。王氏は、自分たち民主中国陣線は、天安門事件以後、海外で中国の民主化を目指して活動してきたが、残念ながら未だに中国は独裁体制のままであり、これには、正直海外の自分達にも問題がある、それは、民主化運動家自身の中にも、中国共産党の意識をそのまま持ち続けている人が多く、運動そのものが民主的に運営されていない面がある、これらの弱点を直さなければならないと述べました。
そして、今の中国は、政府、官僚と民間の意識はかなり解離しており、共産党の権威は確実に揺らいでいる。だからこそ、外部の民主化運動家も含めて、今の中国の体制を開けていくために努力しを手否かければならないと述べました。
続いてバングラデシュの、プロビール・ビカシュ・サーカー氏が登壇、自分はまず地球人であり、続いてアジア人であり、そしてバングラデシュ人であると自己紹介した後、このアジアの偉大な文学者である詩人タゴールを紹介。彼が日本の岡倉天心や頭山満とも深い交流を持ったことに触れ、そしてさらに、その流れから生まれた人たちとして、チャンドラ・ボース、パール判事等の偉大な先人たちがいることを紹介しました。そして、このような方々の遺志を引き継ぎ、このアジアの諸民族の独立と平和を、自分たち自身の力でアジア人は実現していかなければならないと述べました。
プロビール・ビカシュ・サーカー氏、チョウチョウソー氏
続いて ビルマ民主化ネットワークのチョウチョウソー氏が登壇、今ビルマは民主化が順調に進んでいるかのようにみられているけれども、現実には軍政権は未だに強い権力を持っていること。そして、少数民族とは一部では武力対決が続き、和平プロセスに応じた民族もいるが、残念ながら未だにスムーズには進んでいないなど、民主化への展望はまだ決して楽観視できないと述べました。だからこそ、海外の自分たちビルマ人は、内部で苦しい戦いをしている民主化運動家たちを支援していくので、皆様もビルマの現実を見つめ続けてほしいと述べました。
続いて南モンゴル民主運動基金のオルホノド・ダイチン氏が登壇。本日は国連教育科学文化機関(ユネスコ)が1999年に認定した「国際母語デー」であるけれども、実は故郷南モンゴルでは、中国の抑圧によって、私達の母語であるモンゴル語が滅ぼされようとしていると述べました。
そして、最近南モンゴルでは、牧畜民たちが、自分の土地を守るために北京に陳情し、政府に訴えている、これまでも確かに南モンゴルでは、中国人が大量に移住してきて土地を奪うことへの抗議運動が続いていたが、これまでは主として知識人や学生が運動の中心だった。現在は、牧畜民自身が起ち上がっており、運動はより民衆に根付いたものになっている、これに対し中国政府ももちろん弾圧を強め、最近、牢獄から釈放されたハダ氏自身も、牢獄から出ても自分は事実上監禁されたままの状態だが、それでも、もはや南モンゴル人の抵抗を中国政府は抑えきれなくなっていると述べました。
オルホノド・ダイチン氏、アウン・ミン・ユン氏
続いてベトナム革新党のアウン・ミン・ユン氏が登壇。今年はサイゴンが陥落して南ベトナム政府が倒されてから40周年の年であることを指摘し、現在、ベトナムは経済も改革解放され、いい方向に進んでいるように思われているけれど、一党独裁で民衆の自由が抑圧されているという点では何もサイゴン陥落時から保湿的には変わっていないと述べました。ただ、北朝鮮のようにむき出しの弾圧や収容所があったり、また中国のような超大国で、世界が意識せざるを得ないような存在であれば、国際社会も関心を持つけれども、ベトナムはあまり目立たないから問題が気付かれていない。しかし、日本ではだれでも気軽に書けるブログで正当な政府批判や問題点を指摘しただけでも、次々と人々が逮捕されていることを述べ、それでもベトナム人たちは、だれかが逮捕されればだれかが引き継いでインターネットを活用して政府批判を続けている、民主化の流れはベトナムでも確実に起こるはずだと述べました。
最後に、アジア自由民主連帯協議会のペマ・ギャルポ会長が登壇し、今回、アジア諸民族の登壇者全員が、もっともっと訴えたいことがあったのに、時間のルールをきちんと守ったことを、議論のルールを守るという点で讃えたのち、この集会が、第一回以後、多くの方々に支えられて継続してきたことに深い感謝の念を述べました。
ペマ・ギャルポ会長
そして、これまで自分たちは、中国や他の独裁体制に対して、その弾圧を批判する事に努めてきたが、これからは、ではその独裁体制の民主化後、どのような体制、特に経済の仕組みを作って、真の意味で民衆を幸せにしていくかを学ぶ必要がある。それには、共産主義独裁とは全く違った価値観で、労働者や国民大衆の生活を守ろうとした理念である、民主社会主義の考えをまず学ぶことからはじめたいと述べました。その上で、この集会を本日を含めて継続的に支援、運営にも4回とも支援してくれた、旧民社党系の人たちの名前を挙げつつ、今後、理論面でもいろいろと教えをいただきたいと述べました。
そして、今年は第二次世界大戦終戦から70周年だが、先の大戦における日本の役割と、植民地体制からの解放の意義を、実はアジアの多くの民族はちゃんと理解している、何よりも、日本と共に、自民族の独立のために闘った多くの人たちがいる。日本政府が軽々しく謝罪したり、自らの歴史を一面的に否定することは、実はそのアジア諸民族に対しても失礼なことではないかと指摘し、同時に日本自らが自分の歴史を誇ることは逆に反発も招き、時として傲慢にみられる危険性もあるのだから、自分たち日本以外のアジア人にこそ、日本の歴史的意義を語らせてほしいと訴えました。
三浦小太郎事務局長、司会 古川郁絵、
最後に、アジア自由民主連帯協議会事務局長の三浦より決議文が読み上げられ、拍手によって採択され、約二時間の集会は閉会いたしました。アジア諸民族の方々には、もっと訴えたいことをわずか数分にまとめてくださったことに感謝すると共に、また今後も協議会講演会などで訴える場を作っていきたいと思います。(文責 三浦小太郎)
【報告と動画】第4回「アジアの民主化を促進する東京集会」
https://freeasia2011.org/japan/archives/3864